現代、過去にかかわらず、社会は不安を根底に動いている気がしている。不安は需要を生み出し、それは行動における答えとなる事も多い。
現代における不安の身近な例は社会的な孤立ではないか。
元々人間関係は流動的なものであるが、仕事や趣味のグループというのは昔から存在しており、一時的に生存確率の向上と共に孤独という不安から逃れる術として発生したものである。SNSの発達もこうした不安から逃れたいという願望から利用が加速した側面も考えられうる。
では、SNSで24時間繋がりを保つことが出来る現代においても孤立不安が発生しているのは何故か。
それは、SNSでの関係性がベースになるほどに一般化した為、より深い関係構築でなければ幸福を感じられなくなったのではないか。幸福に大して麻痺している状態である。
例えば新たな環境に身を置く場合に最初は不安を覚えるものであるが、数年もすればそれなりに安心感を得るものである。しかし、期間が長くなればなるほどその状況に不満を覚えるようになる。その関係性をベースに幸福度を考えてしまい、麻痺している状態だ。
マズローの五段階欲求説では段階的に欲求が満たされることでより高次の欲求が生まれるとされているが、所属と愛の欲求が満たされても生理的欲求や安全の欲求が強くなるケースや、逆に安全への欲求を脅かすような挑戦を行うケースはある。
会社でもそれなりのポジションに落ち着いたと思ったら、リスクの高い転職をして人間関係や社会的なポジションを不安定にしたり、危険なスポーツなどに挑戦してみたりするのはよく聞く話だ。
むしろ欲求には階層的な優先順位があるというより、複数の欲求が常に並存し、その強度が状況によって変化するのではないか。
つまり、実は人間は挑戦という名の不安を求めている。安定した状態を保てるように出来ていない可能性がある。
ここで一つ内容を狭めた仮説を置いてみる。
「現代の転職市場が盛り上がっている」のは、「SNSの普及によって視野が広がり、より高いキャリアの環境を見ることが出来るようになったので、より高い安定を求めて動いている」からではなく、「SNSにより所属の欲求が一定のレベルで安定するようになった事で、他の欲求の不確実化を求めるようになり、その一角が転職というリスク行動である」というものだ。
これは「より良い環境へと移る」ということではなく、現在の安定的な状況に対して逆に不確実性を欲するようになり、それを合理的な回答とする為に「より良い環境へ移る為」という風に自ら変換し、行動を起こしているのではないかという可能性の話である。
リクルート業界の広告では「より自分の実力を発揮できる環境に」という謳い文句が殊更に使われている。これは挑戦であるわけだから、本来は安定を求めているのであれば転職を誘引する言葉にはならないはずである。なので、謳い文句になっているキャリアアップという言葉は実は「不確実(=不安)」という事の変換された形となっているのではないか。
このような安定化させない人間自身の仕組みが、世の中に差異を生み、多様性を高くして人類全体の生存の確率を高めている。つまり世の中が不安定であるというのは全体で見れば競争が行われているという事なので、正常な環境である証拠であるとも言える。
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