僕は「OMORI」というゲームが好きだ。
初めてゲームトレイラーを見たときは「ゆめにっきみたいな感じかなー。」と思ったくらいで、そこまで気にしていなかった。
ただ、steamの評価が圧倒的に好評を維持していたことと、丁度時間が出来た時だったのもありプレイすることにした。
結果、一気にクリアしてしまうほど面白かった。
進めれば進めるほど引き込まれるストーリー、ドットで美しく描き込まれたビジュアル、ウィットの効いたシステムや各イベント、個性的で愛すべきキャラクター達、そしてそれらを彩る楽曲群。
当初想像していた「ゆめにっきっぽいゲーム」ではなく、このゲームでしか得られない栄養が多分に含まれていた。
以上のように大変面白かったが、このゲームはプレイする人の覚悟を試しにきている感じもした。
以下、僕が思った内容ですが、プレイした前提の話になるので未プレイの方は分からないかも。
このゲームはマルチエンドになっているが、主に2つのエンディングが対比的に存在している。
一つは全ての秘密を持ったまま主人公が飛び降り自殺する結末。もう一つは全ての秘密を打ち明けてから当初の予定通り引っ越すエンディング。(おそらくこちらがグッドエンド)
それぞれ、歌詞付きのテーマソングが設定されているが、非常に象徴的なものになっている。
簡単に言えば自殺エンドで流れる曲では、「眠いからおやすみなさい」という歌詞、グッドエンドでは「眠いけど目を覚まさなきゃ」という歌詞の内容である。
このゲームでは、夢と現実世界を行き来しながら、かつての主人公の「罪」に向き合うこととなる。”夢”の中では、主人公達とその友人、死んだはずの姉は仲良く楽しく過ごしている。しかも夢の中での冒険は皆の一致団結を促し続け、ある程度進めていくとすっかり仲間と意気投合しているといった感じである
主人公の持つ”罪”を隠し続ける限りはこの”夢”は維持されていく。
そしてある時、プレイヤーは”夢”を見続けて平和な代わり映えのない安定的な世界に居続けるか、未来の不確かな道へ踏み出すかの選択をさせられる事になる。
もちろんプレイヤーは色々エンディングを経由するかもしれないが、最終的にグッドエンドを選択するとは思う。ここで自身の罪(過失で姉を殺してしまい、友人と共にその事実を隠蔽した事)を友人たちに打ち明けた後、友人達がどのような反応をしたのかは作中で示されていない。
可能性として友人関係が破綻してしまうか、非常にギクシャクしたものになるだろうという事は十分ありうる。それほどまでに主人公が行ったこの罪は、友人間において重い事である。
しかし、グッドエンドでは重苦しい曲が流れること無く、「夢から覚めて先に進まないと」という歌詞が歌われている。
つまり、このゲームのグッドエンドではプレイヤーに「これまで共に戦ってきた友人との関係が破綻してしまうかもしれないけど、それでも主人公の決断を尊重出来るか」という事を突きつけているのだと思う。
罪を隠すことで維持されていた夢を破壊し、新たな道を進む事。このゲームの主人公は「物言わぬ主人公」であるが故にプレイヤーに選択をゆだねている。故に感情移入しやすく設定されているため、この決断を容易には受け入れられないと思う。(だからこそ、「その後も友人関係は維持されるはずだ」と考えたりも、もちろん出来る。ていうか、そうだったらなと思う・・・。)
ただ、グッドエンドの歌詞が示すように、「オモリ=サニーが”夢”の中でしか成立しない友人関係から離れ、未来に生きること」を本当に応援する覚悟があるのか、プレイヤーは「OMORI」に試されている。
正直、僕はこの夢から覚めたくないと思っちゃったけど。
それでもやっぱり、決断を下したサニーを応援したい。
そう心から思えた時、プレイヤーにとっての「OMORI」の真のエンディングを迎えられるのだろう。